東京高等裁判所 平成2年(行コ)75号 判決 1991年1月30日
控訴人
ネッスル株式会社
右代表者代表取締役
エイ・エフ・オー・ヨスト
右訴訟代理人弁護士
青山周
被控訴人
中央労働委員会
右代表者会長
石川吉右衛門
右指定代理人
萩澤清彦
同
藤村誠
同
吉住文雄
同
笹川康二
被控訴人補助参加人
ネッスル日本労働組合
右代表者委員長
斉藤勝一
被控訴人補助参加人
ネッスル日本労働組合東京支部
右代表者執行委員長
植野修
被控訴人補助参加人
ネッスル日本労働組合島田支部
右代表者執行委員長
長谷川保夫
右補助参加人三名訴訟代理人弁護士
古川景一
同
岡村親宜
同
山田裕祥
同
伊藤博史
同
佐藤久
同
杉山繁二郎
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人が、控訴人を再審査申立人、被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合及び被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合東京支部を再審査被申立人とする中労委昭和五九年(不再)第四二号事件並びに被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合及び被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合東京支部を再審査申立人、控訴人を再審査被申立人とする中労委昭和五九年(不再)第四三号事件について、昭和六〇年一二月一八日付けをもってした命令中、主文第一項ないし第三項及び主文第四項のうち控訴人の再審査申立てを棄却した部分を取り消す。
(三) 被控訴人が、控訴人を再審査申立人、被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合及び被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合島田支部を再審査被申立人とする中労委昭和六〇年(不再)第一六号及び第一七号事件並びに被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合及び被控訴人補助参加人ネッスル日本労働組合島田支部を再審査申立人、控訴人を再審査被申立人とする中労委昭和六〇年(不再)第一八号事件について、昭和六一年六月一八日付けをもってした命令中、主文第一項ないし第三項及び主文第四項のうち控訴人の再審査申立てを棄却した部分を取り消す。
(四) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とし、参加によって生じた費用は第一、二審とも補助参加人らの負担とする。
2 被控訴人及び補助参加人
本件控訴を棄却する。
二 当事者双方の主張及び証拠の関係は、原判決事実摘示及び当審記録中の書証目録のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加、訂正する。
1 原判決書九頁九行目「本部執行委員長は四宮義臣」の後に「(以下「四宮」という。)」を加え、同行「以下、四宮義臣」の「義臣」を削除する。
2 一四頁五行目「同日」を「同年七月二〇日」に改める。
3 三四頁二行目「義臣(以下「四宮」という。)」を削除する。
4 三九頁五、六行目「この文書の中で、」の次に「「」を加え、同頁末行「応ずるべきである、」を「応ずるべきである。」」に改める。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するものであり、その理由は、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加、訂正する。
1 一四八頁九行目「(一)」を「(二)」に改める。
2 一五七頁一行目「この文書の中で、」の次に「「」を加え、同頁七行目「応ずるべきである、」を「応ずるべきである。」」に改める。
3 一五九頁一行目冒頭に「「」を加え、同頁四、五行目「義務もない、」を「義務もない。」」に改める。
4 一六〇頁四、五行目「<1>松村ら」を「<1>前記(五)の松村ら」に改める。
5 一七五頁三行目「ならないのである。」の後に「そして、前記認定の客観的な団結体としての実質に照せば、補助参加人組合、訴外組合とネッスル労組との関係がにわかに決し難いものであるとしても、補助参加人組合が、ネッスル労組という単一の組織体の中の内部組織即ち組合内組合というべきではなく、補助参加人組合と訴外組合は別個独立に存在していることは明らかである。」を加える。
6 一七六頁一〇、一一行目「勘案すると、」の後に「たとえ控訴人が斉藤派から組合役員選出の通知や組合規約の提出を受けていないとしても、」を加える。
7 一八五頁一〇行目「にわかには判断し難いから、」から一八七頁六行目末尾までを「にわかに判断し難いところである。しかし、仮に、訴外組合が従来のネッスル労組を正統に承継したものでこれと同一性を有するものであるとしても、前記認定のように旧ネッスル労組が内部抗争の結果事実上二つの組合になり、しかも一方の補助参加人組合の組合員から中止申し入れがあったような場合には、もはやこれまでのチェックオフ協定は、右のような申し入れをした組合員には及ばないものと解するのが相当である。実質的に併存し、抗争する組合のいずれか一方の組合員の給与からチェックオフした組合費を他方の組合に交付することは、一方の組合の財政的基盤を弱体ならしめ、反面では他方の組合を著しく利する行為となることは明らかであり、これは使用者の中立保持義務に違背する行為といわざるをえない。そうであれば、中立保持義務を負担する使用者として、右の結果を招来する便宜供与を義務付けられる所以はなく、したがって、右のような申し入れをした組合員との関係ではチェックオフ協定の効力が及ばないというべきだからである。
そして、右の結論は、チェックオフの中止を申し入れた組合員が訴外組合から組合規約所定の脱退手続を履践せず、又は除名されたことがないために、形式上は、訴外組合とのチェックオフ協定の効力が及ぶかにみえる状態であるとしても同様であるというべきである。けだし、すでに説示したように労働者が労働組合を結成する権利は憲法二八条に由来しているのであって、その団結権は保障されるべきであり、訴外組合からの脱退又は除名の有無は、新たな労働組合の成立をなんら阻害するものではないばかりか、本件においては、前記のように組合としての正統性を根拠づけるために補助参加人組合も訴外組合もネッスル労組との同一性を主張し、またユニオン・ショップ制の下でネッスル労組の組合規約に基づいて脱退し又は除名された組合員が存在しないというだけのことであって、その実質は二つの独立した組合が併存し、かつ互いに争っている状況にあり、補助参加人組合の組合員が訴外組合にも属しているという状態ではないからである。控訴人の主張は採用できない。」に改める。
8 一八九頁三行目「できない。」の後に、「また、右の救済命令にかかる処置をもって、労働基準法二四条に反するということもできない。」を加える。
二 よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山口繁 裁判官 安齋隆 裁判官 森宏司)